モバイル通信の常識が変わりつつある今、海外旅行でのネット環境もeSIMが主流になりつつあります。カップルや夫婦、友人と二人で海外へ行く際、「一つのeSIMを契約してテザリングで共有すれば安く済む」と考える人は非常に多いです。
私はこれまで多くの国で通信環境をテストしてきましたが、結論から言うと「二人とも個別に契約する」のが正解といえます。ここでは、なぜ共有が推奨されないのか、そして二人で使う場合に最適なキャリア選びについて詳しく解説します。
共有|テザリング利用が推奨されない3つの理由
一つのeSIMを契約し、片方のスマホからテザリング(インターネット共有)で電波を飛ばす方法は、一見するとコスト削減の妙案に見えます。しかし、実際の旅行中には致命的なデメリットが3つ発生するため、快適な旅を損なう原因になります。
バッテリー消費と行動範囲の制限
テザリングの親機となるスマホは、現地の基地局との通信と、子機へのWi-Fi発信を同時に行います。通常の数倍の負荷がかかるため、バッテリーは驚くべき速さで消耗していきます。
親機の充電が切れると共倒れになる
観光中に親機のバッテリーが切れた瞬間、二人ともインターネット環境を同時に失います。地図アプリも翻訳機能も使えなくなり、ホテルへの帰り道すらわからなくなるリスクがあります。モバイルバッテリーを常に携帯すれば解決できますが、荷物が増えてスマートな旅行とはいえません。
別行動が一切できなくなる
テザリングの有効範囲は、親機から数メートル以内です。広いショッピングモールでの買い物や、トイレ休憩などで少し離れただけでも、子機側は即座に通信圏外になります。連絡を取り合う手段がなくなるため、必ず隣にいなければならないという強い制約が生まれます。
通信速度の低下と「隠れ制限」
テザリング経由の通信は、直接接続に比べて速度が低下し、反応速度(レイテンシ)も悪化します。さらに厄介なのが、多くの「無制限プラン」に設けられているテザリング専用の制限です。
テザリング特有の容量上限
例えば、データ無制限を謳うHolaflyなどのサービスでも、テザリング利用には「1日500MBまで」といった厳しい上限が設定されているケースが大半です。親機は使い放題でも、子機側はすぐに速度制限がかかり、実質的に使い物にならなくなります。
複数接続による遅延
二人同時にInstagramで動画を見たり、Googleマップを操作したりすると、帯域が圧迫されて表示が極端に遅くなります。ストレスなく検索やSNS投稿を行いたいのであれば、回線を分けることは必須条件です。
タイプ別|二人旅におすすめのeSIM選び
個別に契約する場合でも、二人の旅行スタイルに合わせて最適なプロバイダーを選ぶことで、コストと利便性のバランスをとることができます。ここでは、代表的な2つのサービスを比較して提案します。
データ無制限で安心の「Holafly(オラフライ)」
Holaflyは、世界160か国以上でデータ無制限プランを提供しているeSIMプロバイダーです。動画視聴やビデオ通話を頻繁に行うカップルや、地図を常時表示させておきたい場合に適しています。
ヘビーユーザーへのメリット
データ残量を気にする必要がないため、旅先での調べ物やSNSアップロードを自由に行えます。お互いに別々の場所で大量の通信を行っても、速度制限におびえる必要がありません。
日本語サポートの重要性
24時間365日の日本語チャットサポートがあるため、トラブル時にも安心です。片方の通信が繋がらないといった不測の事態でも、即座に日本語で相談できる点は大きな強みといえます。
コスト重視でシェア機能がある「Airalo(エアロ)」
Airaloは、必要なデータ容量(1GB、3GBなど)を指定して購入するタイプのサービスです。カフェやホテルのWi-Fiを併用し、移動中だけ通信できれば良いというペアにとって、通信費を大幅に節約できます。
一人がまとめて購入する方法
Airaloは一つのアカウントで複数のeSIMを購入できます。代表者が二人分のeSIMを購入し、インストール用のQRコードや詳細情報をパートナーに送ることで、支払いを一括管理できます。
必要な分だけチャージする運用
最初は少なめの容量で購入し、足りなくなったらアプリから即座に追加チャージできます。無駄な出費を抑えつつ、必要な分だけを賢く使うスタイルに最適です。
トラブルを防ぐための設定と準備
eSIMを二人で快適に使うためには、出発前の準備と設定がカギを握ります。現地到着後に慌てないよう、以下の手順を確実に実行してください。
出国前のインストールが必須
eSIMのプロファイル(通信設定)のインストールには、安定したインターネット環境が必要です。現地の空港Wi-Fiは接続が不安定なことが多く、設定に手こずる原因になります。
空港Wi-Fiのリスク
到着ロビーのWi-Fiは多くの旅行者が同時に接続するため、非常に低速です。QRコードが表示できなかったり、ダウンロードが途中で止まったりするトラブルを避けるため、必ず日本の自宅でインストールを済ませてください。
アクティベートのタイミング
インストールは日本で行いますが、回線の切り替え(アクティベート)は現地到着後に行います。設定画面で「この回線をオンにする」というスイッチを操作するだけで、すぐに現地の電波を掴むことができます。
メイン回線との共存設定
最新のiPhoneなどでは、日本のSIMと海外のeSIMを同時に有効化しておけます。これを活用することで、電話の着信は日本の番号で受け、データ通信は現地のeSIMで行うという使い分けができます。
ローミング設定の確認
日本の通信キャリア(ドコモやauなど)の設定で「データローミング」がOFFになっていることを必ず確認してください。ここがONになっていると、意図せず高額な海外通信料が発生する恐れがあります。
緊急時のSMS受信
日本の回線を有効にしておくことで、クレジットカードの本人認証などで必要なSMSを受信できます。二段階認証が求められる場面は多いため、日本のSIMを完全に無効化せず、通話・SMSのみ待受状態にしておくのが賢い運用です。
まとめ
海外旅行におけるeSIMの利用は、二人であっても「個別契約」が正解です。テザリングによる共有は、バッテリー切れや行動制限、通信速度の低下といった多くのデメリットを抱えており、数百円から数千円の節約のために旅の快適さを犠牲にする価値はありません。
データ無制限が必要ならHolafly、コストを抑えるならAiraloといったように、それぞれのニーズに合わせて最適なプランを選んでください。快適な通信環境を整えることは、二人の旅行をより安全で楽しいものにするための投資です。


