スマートフォンの通信キャリア選びは、毎月の固定費に直結する重要な決断です。特に注目を集めているのが、自社回線で大胆なプランを打ち出す「楽天モバイル」と、老舗MVNOとして堅実な人気を誇る「IIJmio」です。
私がモバイル契約を見直す際も、この2社は常に比較対象となります。片方はデータ無制限と無料通話、もう片方は細かなプラン設定と安定した回線品質。どちらも魅力的ながら、強みと弱みがはっきりしています。
この記事では、楽天モバイルとIIJmioをあらゆる角度から徹底的に比較し、さらに「デュアルSIMでの併用」という選択肢まで深掘りします。あなたの使い方に最適なプランを見つけるお手伝いをします。
楽天モバイルとIIJmio|根本的な違いを解説

この2社を比較する上で、大前提となるビジネスモデルの違いを理解する必要があります。ここが料金や品質の差に直結します。
楽天モバイル|自社回線(MNO)の強みと弱み
楽天モバイルは、NTTドコモ、au、ソフトバンクに次ぐ第4のキャリア(MNO)です。MNOとは、自社で通信基地局などのインフラを所有・管理する事業者を指します。
自社インフラを持つため、サービス設計の自由度が高いのが最大の特徴です。「データ通信無制限」や「Rakuten Linkによる国内通話無料」といった、常識破りなプランはMNOだからこそ実現できます。
一方で、弱点はインフラ整備が発展途上である点です。auローミング(パートナー回線)で人口カバー率99.9%を達成していますが、自社回線エリアはまだ限定的で、場所によっては繋がりにくいという課題も抱えています。
IIJmio|老舗MVNOの堅実さと注意点
IIJmioは、MVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる形態です。MVNOは自社で通信インフラを持たず、NTTドコモやauといった大手キャリアから回線を借りてサービスを提供します。
最大の強みは、すでに整備された広範なエリア(ドコモ網・au網)を利用できる安定性です。インフラ投資が不要な分、安価な料金プランを提供できます。
注意点は、回線を借りていることによる速度低下です。特に、多くの人が一斉に通信を利用する平日のお昼休み(12時台)などは、通信速度が著しく遅くなる傾向があります。
【徹底比較】料金・通信品質・通話サービスを丸裸に

両社の具体的なサービス内容を、3つの側面から徹底的に比較検討します。
料金プラン比較|あなたのデータ使用量ではどっちがお得?
料金体系は、両社の思想が最も色濃く反映されています。楽天モバイルはシンプルさ、IIJmioは選択肢の多さが特徴です。
楽天モバイル「Rakuten最強プラン」の特徴
楽天モバイルの料金プランは「Rakuten最強プラン」の1種類のみです。使ったデータ量に応じて料金が自動で変動する従量制を採用しています。
- 〜3GB|1,078円
- 3GB超〜20GB|2,178円
- 20GB超|3,278円(データ無制限)
非常にシンプルで分かりやすい反面、3GBを超えると一気に料金が1,100円上がります。この「3GBの壁」が大きなポイントです。
IIJmio「ギガプラン」の特徴
IIJmioの「ギガプラン」は、ユーザーの利用状況に合わせて細かくプランを選べるのが特徴です。音声SIMのデータ容量は以下の8段階から選択します。
- 2GB|850円
- 5GB|950円
- 10GB|1,400円
- 15GB|1,800円
- 20GB|2,000円
- 25GB|2,300円
- 35GB|2,700円
- 55GB|3,900円
2GBから20GBまでの間を細かく設定できるため、自分の使い方に無駄なく合わせられます。
【データ量別】料金シミュレーション
両社の料金をデータ使用量別に比較した表を作成しました。
データ使用量 | 楽天モバイル 月額料金 | IIJmio(音声SIM)月額料金 | コスト優位な事業者 |
2GB | 1,078円 (〜3GB) | 850円 | IIJmio |
---|---|---|---|
5GB | 2,178円 (〜20GB) | 950円 | IIJmio |
10GB | 2,178円 (〜20GB) | 1,400円 | IIJmio |
15GB | 2,178円 (〜20GB) | 1,800円 | IIJmio |
20GB | 2,178円 | 2,000円 | IIJmio |
30GB | 3,278円 (無制限) | 2,700円 (35GB) | IIJmio |
50GB | 3,278円 (無制限) | 3,900円 (55GB) | 楽天モバイル |
無制限 | 3,278円 | 提供なし | 楽天モバイル |
この表から明らかなように、月間のデータ使用量が約35GB以下であればIIJmioが圧倒的に安価です。しかし、それを超えるヘビーユーザーにとっては、楽天モバイルの無制限プランが唯一無二の選択肢となります。
通信品質と速度|「安定」のIIJmioか、「可能性」の楽天か
料金の次に重要なのが、日常利用での快適さを左右する通信品質です。
エリア(カバレッジ)の比較
カバレッジ(通信エリアの広さ)においては、IIJmioに軍配が上がります。NTTドコモとauの広範なネットワークを利用するため、ビル内、地下、山間部でも安定した接続が期待できます。
楽天モバイルもパートナー回線を含めて人口カバー率99.9%をうたいますが、自社回線にはまだ「穴」があります。私の経験でも、都市部から離れると楽天回線が圏外になり、パートナー回線に切り替わる(あるいは繋がりにくくなる)ケースがあります。
通信速度の比較
通信速度のポテンシャル(最大速度)では、楽天モバイルが優位です。自社回線の5Gエリア内では、IIJmioを大きく上回る高速通信を記録することがあります。
ただし、IIJmioの速度が遅いわけではありません。最大の弱点である「平日の昼12時台」を除けば、動画視聴やウェブ閲覧など、日常的な利用でストレスを感じることはほとんどありません。安定性を取るか、速度のロマンを追うかの違いと言えます。
通話サービス比較|「Rakuten Link」は本当に最強か?
通話サービスは、両社の個性が最も際立つ領域です。
楽天モバイルの通話|Rakuten Link
楽天モバイル最大の武器が、専用アプリ「Rakuten Link」です。このアプリを使うと、国内通話が時間や回数を問わず完全に無料になります。SMSの送受信も無料です。
これはデータ回線(VoIP技術)を利用する仕組みです。そのため、通信環境が悪い場所では音声が途切れたり、不安定になったりする弱点があります。
IIJmioの通話|選べる通話定額
IIJmioは、スマートフォンの標準電話アプリを使った高品質な通話を提供します。標準の通話料も30秒11円と、大手キャリアの半額です。
利用頻度に応じて、3種類の「かけ放題オプション」を選べます。
- 通話定額5分+|月額500円
- 通話定額10分+|月額700円
- かけ放題+|月額1,400円
コストを最優先するなら楽天モバイル、通話品質や標準アプリの利便性を重視するならIIJmio、という明確な違いがあります。
デュアルSIMでの併用が最強の選択肢か?

楽天モバイルとIIJmio、それぞれに一長一短があります。もし「どちらか一方を選べない」と感じたなら、「デュアルSIMでの併用」が最適解となります。
デュアルSIM併用のメリット|「いいとこ取り」戦略
デュアルSIMとは、1台のスマートフォンで2つのSIM(2回線)を同時に利用する機能です。eSIMに対応した端末(iPhone XR以降や近年のAndroid端末)で利用できます。
この機能を使って、楽天モバイルとIIJmioの「いいとこ取り」を実現します。
- 通話|楽天モバイル(Rakuten Linkで国内通話無料)
- データ通信|IIJmio(安価で安定したデータプラン)
この組み合わせにより、楽天モバイルの「3GBの壁」と「通信エリアの不安」、IIJmioの「通話料」という両社の弱点を完璧に補い合えます。
併用の費用対効果|どれだけ安くなる?
この戦略がどれほど経済的か、シミュレーションで確認します。 楽天モバイルは3GB以下の1,078円で維持し、データ通信はIIJmioの安価な「データeSIMプラン」で補う想定です。
月間データ需要 | 楽天モバイル単独 | IIJmio単独(音声) | デュアルSIM併用コスト | 楽天単独比での節約額 |
5GB | 2,178円 | 950円 | 1,728円 (楽天1,078円 + IIJmio 5GB 650円) | 月450円 |
---|---|---|---|---|
10GB | 2,178円 | 1,400円 | 2,128円 (楽天1,078円 + IIJmio 10GB 1,050円) | 月50円 |
15GB | 2,178円 | 1,800円 | 2,508円 (楽天1,078円 + IIJmio 15GB 1,430円) | -330円 |
この表が示す通り、月間データ使用量が4GBから13GBあたりのユーザーにとって、デュアルSIM併用は経済的メリットが非常に大きいです。
私が実際にデュアルSIMを運用する際も、この構成(楽天=通話、IIJmio=データ)を採用しています。通信の安定性とコスト削減を両立できる、非常に合理的な使い方です。
デュアルSIMの設定と運用ガイド
導入は難しくありません。eSIM対応スマートフォンを用意します。
- SIM構成|物理SIMに「楽天モバイル」、eSIMに「IIJmio(データeSIMプラン)」を契約するのがおすすめです。
- 端末設定(iPhoneの場合)|「設定」>「モバイル通信」からeSIMを追加します。
- 役割分担|「デフォルトの音声回線」を楽天モバイルに、「モバイルデータ通信」をIIJmioに設定します。
- 最重要設定|「モバイルデータ通信の切り替えを許可」を必ずオフにします。これをオンにすると、IIJmioの電波が弱い時に楽天モバイルのデータ通信が使われ、意図せず3GBを超過する危険があります。
運用中は、「my 楽天モバイル」アプリで楽天側のデータ使用量が3GBに近づいていないか、時々確認するだけで快適に利用できます。
まとめ

楽天モバイルとIIJmioは、どちらも優れた特徴を持つ通信キャリアです。データ無制限と無料通話の「楽天モバイル」、安価なプランと安定エリアの「IIJmio」。どちらを選ぶかは、あなたのデータ使用量と、何を重視するかで決まります。
もし両方のメリットを享受したいなら、デュアルSIMでの併用が強力な選択肢となります。この記事を参考に、あなたの使い方に完璧にフィットするモバイル環境を構築してください。