2人でスマートフォンを使うとき、データ通信をどう共有するかは悩ましい問題です。特に旅行や外出先では、お互いが快適にインターネットを使いたいと考えるでしょう。eSIMの普及により選択肢は増えましたが、「結局どの方法が一番お得で便利なの？」と感じている人も少なくありません。
この記事では、2人でデータ通信を利用する際の2大選択肢である「テザリング」と「個別プラン」を徹底的に比較します。私が様々な方法を試した結果、たどり着いた最適解を国内利用と海外渡航のシーン別に分かりやすく解説します。この記事を読めば、あなたの状況に合ったベストな選択ができます。
eSIMを2人で共有する基本｜技術的な制約と2つの戦略
eSIMを2人で使う方法を考える前に、まず知っておくべき重要な原則があります。それは、1つのeSIM契約を2台のスマートフォンで同時に利用することはできないという点です。この技術的な制約を理解した上で、実現可能な2つの戦略について解説します。
1つのeSIMを2台で共有できない理由｜「1プロファイル＝1デバイス」の原則
eSIMは、スマートフォン本体に組み込まれたデジタルのSIMです。契約情報などを記録した「プロファイル」をダウンロードして利用します。このプロファイルは、セキュリティ上の理由から、1つのデバイスにしか関連付けられません。
もし複数のスマホで同じプロファイルを同時に有効化できてしまうと、電話番号の乗っ取りや不正利用といった犯罪のリスクが飛躍的に高まります。そのため、「1プロファイル＝1デバイス」という原則が厳格に適用されています。つまり、1つの契約を2人で文字通り「共有」することは不可能です。
2人がeSIMを使うための現実的な2つの方法
1つのeSIMを直接共有することはできませんが、2人でデータ通信を利用するという目的を達成する方法はあります。その戦略は、大きく分けて2つに集約されます。
方法1｜共有接続モデル（テザリング）
この方法は、1人がeSIMを契約したスマートフォンを用意し、その端末の「テザリング（インターネット共有）」機能を使って、もう1人のスマートフォンにWi-Fi接続を提供するモデルです。契約は1つで済みますが、いくつかの制約が伴います。
方法2｜協調プランモデル（個別eSIM）
この方法は、2人がそれぞれ自分のスマートフォンでeSIMを契約するモデルです。契約は2つ必要になりますが、お互いが独立して快適に通信できます。一見コストが高く見えますが、賢いプラン選びで費用を抑えることが十分にできます。
共有接続モデル｜テザリングのメリット・デメリット
テザリングは、1つの契約で2台の端末をネットに繋げられる手軽な方法です。しかし、私が実際に使ってみて感じたのは、その手軽さと引き換えに失うものが非常に大きいという点です。ここでは、テザリングのメリットと、それを上回る深刻なデメリットを詳しく解説します。
テザリングのメリット｜手軽さとコスト感
テザリングの最大のメリットは、何と言ってもその手軽さです。追加の契約は不要で、スマートフォンの設定から「インターネット共有」をオンにするだけで、もう1台の端末をすぐにインターネットに接続できます。
契約が1つで済むため、一見すると通信コストを安く抑えられるように感じます。一時的にインターネット接続を分け合いたい、という緊急時には便利な機能であることは間違いありません。
テザリングの深刻なデメリット｜快適さを損なう4つの理由
テザリングは便利な反面、2人で常時利用する方法としては多くの問題を抱えています。結論から言うと、快適な通信環境を求めるなら、テザリングをメインの手段にすることはおすすめしません。その理由は4つあります。
深刻なバッテリー消耗
テザリングは、スマートフォンの中でも特にバッテリーを激しく消耗する機能の一つです。親機となるスマホは、自身のデータ通信に加え、Wi-Fiルーターとしての役割も果たすため、バッテリーがみるみるうちに減っていきます。最悪の場合、親機のバッテリーが切れると、2人ともが通信手段を失うという共倒れのリスクがあります。
パフォーマンスの低下とデータ消費の加速
テザリングで接続した子機の通信速度は、親機が直接通信する速度よりも遅くなります。2人で同時に動画を見たり、データをダウンロードしたりすると、通信速度の低下は顕著に感じられます。さらに、1つのデータプランを2台で分け合うため、データ容量の上限に達するスピードも格段に速まります。
物理的な距離の制約
テザリングを維持するためには、2人が常にWi-Fiの届く範囲、つまり数メートル以内にいる必要があります。旅行先で別行動を取りたい時や、少し離れた場所で作業をしたい時に、この制約は大きなストレスになります。インターネット接続が親機に完全に依存するため、行動の自由が著しく制限されます。
事業者による制限
全てのプランでテザリングが無条件に使えるわけではない点にも注意が必要です。特に海外旅行向けのeSIMサービスでは、「データ無制限」を謳っていても、テザリング利用にはデータ量の上限が設けられていたり、そもそもテザリング自体を禁止していたりするプランが存在します。
協調プランモデル｜個別eSIMが最適な理由
テザリングが抱える多くのデメリットを考えると、2人がそれぞれeSIMを契約する「協調プランモデル」が、多くの場合で最適な選択肢となります。コスト面の懸念も、戦略的なプラン選びで十分に克服できます。私がこの方法を強く推奨する理由を解説します。
個別eSIMがもたらす圧倒的なメリット
2人がそれぞれeSIMを持つことのメリットは、テザリングのデメリットを全て解消できる点に集約されます。お互いがストレスなく、自由で快適な通信環境を手に入れられます。
| 評価項目 | 共有接続モデル（テザリング） | 協調プランモデル（個別eSIM） |
| 接続安定性・速度 | 不安定で速度も低下しやすい | 常に安定した高速通信を確保 |
| バッテリーへの影響 | 親機に極めて高い負荷がかかる | 両デバイスとも通常通りの消費 |
| ユーザーの自律性 | 低い（親機に依存し、別行動不可） | 高い（完全な行動の自由） |
| データ管理 | 複雑（一方が使いすぎると影響） | シンプル（各自が自己管理） |
| 信頼性 | 親機が故障・紛失すると共倒れ | 互いに独立し冗長性が高い |
このように、個別プランは利便性、安定性、自律性のあらゆる面でテザリングを圧倒します。
コストの壁を乗り越える賢い方法
「でも、2つ契約すると料金が2倍になるのでは？」という心配はもっともです。しかし、通信事業者が提供する様々な割引制度をうまく活用すれば、そのコスト負担は大幅に軽減できます。
国内利用｜家族割・複数回線割引の活用
日本の通信事業者の多くは、家族や同一名義で複数回線を契約すると、月額料金が割引になるサービスを提供しています。例えば、楽天モバイルの「最強家族プログラム」やIIJmioの「家族割引」を利用すれば、2回線目の料金が割引かれ、合計コストを大きく抑えられます。
海外利用｜まとめ買い割引・紹介プログラムの活用
海外旅行向けのeSIMサービスでは、独自の割引制度が充実しています。trifaのように複数のeSIMをまとめて購入すると割引が適用されるサービスや、Airaloのように友人に紹介することで双方に割引クレジットが付与されるプログラムがあります。こうした制度を積極的に利用するのが賢い選択です。
【利用シーン別】2人に最適なeSIMプラン徹底比較
ここからは、より具体的に「国内」と「海外」それぞれの利用シーンで、どの事業者のプランを選ぶべきかを徹底的に比較・解説します。私の分析に基づいた、具体的な推奨プランを紹介します。
日本国内で利用する場合のおすすめプラン
国内での利用は、月々の固定費となるためコストパフォーマンスが重要です。2人での利用に最適な割引を提供する事業者を選びましょう。
データ無制限を求めるなら｜楽天モバイル一択
データ量を気にせず、動画視聴やSNSを思い切り楽しみたい2人には、楽天モバイルが明確な答えです。「Rakuten最強プラン」はデータ無制限で、さらに「最強家族プログラム」を適用すれば、1回線あたり月額110円（税込）の割引が受けられます。2人それぞれがデータ残量を気にすることなく、快適な通信環境を驚くほど安価に手に入れられます。
| 利用データ量 | 1回線目の料金（税込） | 2回線目の料金（税込） | 2人合計の月額料金（税込） |
| ～3GB | ¥1,078 | ¥968 | ¥1,936 |
| ～20GB | ¥2,178 | ¥2,068 | ¥4,246 |
| 20GB超 | ¥3,278 | ¥3,168 | ¥6,446 |
コストを最優先するなら｜IIJmio
月々の通信費をできる限り抑えたい2人には、IIJmioが非常に強力な選択肢です。もともとのプラン料金が安い上に、「家族割引」を適用すると、それぞれの回線が月額100円（税込）割引されます。例えば10GBプランなら、2人で合計20GBを月額2,900円（税込）という低価格で利用できます。
海外旅行で利用する場合のおすすめ戦略
海外旅行では、国内とは異なる視点が必要です。行動の自由と信頼性が何よりも重要になります。
常に個別プランが正解
結論として、海外旅行では必ず2人がそれぞれ個別のeSIMプランを持つべきです。慣れない土地での別行動や、万が一はぐれてしまった時の連絡手段を確保するためにも、テザリングに依存するのはリスクが高すぎます。わずかなコストを惜しんで大きな不便と不安を抱えるべきではありません。
プロバイダーの選び方と割引活用術
最適なプロバイダーは渡航先やデータ使用量によって異なりますが、購入時の戦略は共通しています。それは「割引を最大限に活用すること」です。
- まとめ買い戦略｜trifa2人分のeSIMを一度に決済することで割引が適用されます。購入手続きも1回で済み、eSIMを相手に送るのも簡単です。
- 紹介プログラム戦略｜Airalo, Ubigiまず1人が契約し、その紹介コードを使ってもう1人が契約します。これにより、2人ともが割引やクレジットの恩恵を受けられます。
- クーポン活用戦略｜Holafly多くのプロバイダーが割引クーポンを配布しています。特にデータ無制限プランに強いHolaflyなどを利用する際は、購入前に「Holafly クーポン」と検索する一手間が、確実な節約につながります。
まとめ
eSIMを2人で利用する際の最適解は、利用シーンを問わず「割引制度を活用し、それぞれが個別のeSIMプランを契約する」ことです。
テザリングは一見すると手軽で安価に見えますが、バッテリー消耗、速度低下、行動の制約といった深刻なデメリットを抱えており、2人が快適に通信するための主要な手段にはなり得ません。あくまでも、補助的・緊急的な利用に留めるべきです。
一方、個別プランは、安定した高速通信、バッテリー問題からの解放、そして何より「行動の自由」という、かけがえのない価値を提供します。国内では楽天モバイルやIIJmioの複数回線割引を、海外ではtrifaのまとめ買いやAiraloの紹介プログラムなどを活用することで、コストの懸念も解消できます。
この記事で紹介した方法を参考に、あなたとあなたの大切な人が、いつでもどこでもストレスなく繋がれる、最適なeSIMプランを見つけてください。