海外旅行先でのインターネット接続、皆さんはどうしていますか。高額なローミング料金や、現地のSIMカード購入の手間、不安定なフリーWi-Fiに悩まされた経験は誰にでもあるはずです。私が海外へ行く際も、以前は通信手段の確保が悩みの種でした。しかし、eSIM(イーシム)という技術がその全てを解決してくれました。
eSIMはiPhoneに内蔵されたデジタルのSIMで、物理的なカードの抜き差しは不要です。このeSIMを手軽に利用できるサービスが、今回紹介する『Airalo』です。Airaloを使えば、200以上の国と地域で使えるデータプランを渡航前に購入し、現地に到着した瞬間から快適なインターネット環境を確保できます。
この記事では、私が実践しているiPhoneでのAiraloの使い方とeSIM設定の全手順を、5つの簡単なステップで徹底解説します。
ステップ1|渡航前に必須!2つの重要チェック項目
Airaloを海外で快適に利用するためには、日本にいる間の事前準備が何よりも重要です。特に、お使いのiPhoneがeSIMに対応しているかと、SIMロックが解除されているかの2点は、必ず確認しなければならない必須事項です。この準備を怠ると、現地に到着してからインターネットが使えないという最悪の事態に陥ります。
お使いのiPhoneはeSIMに対応しているか?
すべてのiPhoneがeSIMを利用できるわけではありません。ご自身のiPhoneがeSIMに対応しているか、最初に確認しましょう。
eSIMはiPhone XR、iPhone XS、iPhone XS Max以降のモデルで導入されました。したがって、これらのモデル以降に発売されたすべてのiPhone(iPhone SE 第2世代、第3世代を含む)がeSIMに対応しています。
ただし、注意点があります。中国本土で販売されたiPhoneはeSIMに非対応です。香港やマカオで販売されたモデルも、一部を除いて非対応の場合が多いです。ご自身のiPhoneが対応しているか不確かな場合は、以下の表で確認してください。
iPhoneモデル | eSIM互換性 | 主要な例外と注意点 |
iPhone 14シリーズ以降 | ✔ | 中国本土、香港、マカオで購入した端末の多くは非対応 |
iPhone 13シリーズ | ✔ | 中国本土で購入した端末は非対応。香港・マカオではMiniのみ対応 |
iPhone 12シリーズ | ✔ | 中国本土で購入した端末は非対応。香港・マカオではMiniのみ対応 |
iPhone 11シリーズ | ✔ | 中国本土、香港、マカオで購入した端末は非対応 |
iPhone XS, XS Max | ✔ | 中国本土で購入した端末は非対応 |
iPhone XR | ✔ | 中国本土、香港、マカオで購入した端末は非対応 |
iPhone SE (第2・3世代) | ✔ | 中国本土で購入した端末は非対応 |
SIMロックは解除されているか?
Airaloのような他社のeSIMを利用するには、お使いのiPhoneが「SIMロック解除済み」である必要があります。SIMロックとは、特定の携帯キャリアの回線しか使えないように制限されている状態です。
SIMロックの状態を確認する手順はとても簡単です。iPhoneの「設定」アプリを開き、「一般」>「情報」と進みます。画面を下にスクロールして「SIMロック」という項目を確認します。ここに「SIMロックなし」と表示されていれば、あなたのiPhoneはAiraloを利用する準備ができています。
もし「SIMロックあり」と表示されている場合は、現在契約している国内の携帯キャリア(ドコモ、au、ソフトバンクなど)に連絡して、SIMロックの解除を依頼してください。この手続きは、必ず日本を出国する前に済ませておく必要があります。
ステップ2|旅行プランに合わせた最適なeSIMの選び方
事前準備が完了したら、次はご自身の旅行スタイルに最適なeSIMプランを選びます。Airaloには様々なプランが用意されているので、渡航先や滞在期間、データ使用量を考慮して無駄のないプランを選択することが、コストを抑えるコツです。
プランの種類を理解する|ローカル・リージョナル・グローバル
Airaloは、旅行のスタイルに合わせて主に3種類のプランを提供しています。
- ローカルeSIM|特定の1カ国のみを訪れる場合に最適です。
- リージョナルeSIM|ヨーロッパ周遊や東南アジア周遊など、特定の地域内の複数国を旅する場合に便利です。国境を越えるたびにSIMを切り替える手間が省けます。
- グローバルeSIM|世界一周旅行など、複数の大陸をまたいで広範囲に移動する場合に適しています。
ご自身の旅程に合わせて、最も効率的なプランを選びましょう。
データ容量と有効期間を決める
次に、データ容量(GB)と有効期間(日数)を決めます。これはご自身のスマートフォンの使い方と滞在日数から判断します。
例えば、地図アプリやSNSのチェックが中心であれば少ないデータ容量で十分ですが、動画ストリーミングや大容量ファイルの送受信を行う場合は、余裕を持った容量のプランを選ぶのがおすすめです。滞在日数に合った有効期間のプランを選ぶことも忘れないでください。
【最重要】アクティベーションポリシーを必ず確認する
これは多くの方が見落としがちですが、絶対に確認してほしい最重要項目が「アクティベーションポリシー」です。これは、eSIMの有効期間がいつから開始されるかを定めたルールです。
- タイプ1(到着時にアクティベート)|有効期間は、eSIMが渡航先の対応ネットワークに接続した時点から開始されます。このタイプのプランは、日本にいる間にインストールしても問題ありません。
- タイプ2(インストール時にアクティベート)|有効期間は、eSIMをiPhoneにインストールした瞬間から開始されます。たとえ日本にいてもカウントダウンが始まってしまいます。
この違いを知らないと、せっかく購入したプランが無駄になることがあります。例えば「インストール時にアクティベート」される7日間のプランを、旅行の1週間前にインストールしてしまうと、現地に着いた頃には有効期限が切れている、という悲劇が起こります。プラン購入画面の「追加情報」から、どちらのタイプか必ず確認しましょう。
ステップ3|日本で完結!eSIMの購入とインストール手順
最適なプランを見つけたら、いよいよiPhoneにeSIMをインストールします。この作業は、データ通信を必要とするため、必ずWi-Fi環境が安定している日本国内で、出発前に済ませておきましょう。空港のフリーWi-Fiなどでは不安定なことがあるので、自宅で行うのが確実です。
3つのインストール方法|おすすめは「ダイレクト方式」
Airaloアプリでプランを購入すると、eSIMをインストールできます。インストール方法は3つありますが、私のおすすめは最も簡単な「ダイレクト方式」です。
- ダイレクト方式(推奨)|Airaloアプリの指示に従ってボタンをタップしていくだけで、自動的にeSIMがインストールされます。初心者の方に最適です。
- QRコード方式|パソコンなどでQRコードを表示し、それをiPhoneのカメラで読み取ってインストールする方法です。
- 手動方式|SM-DP+アドレスとアクティベーションコードという情報を手で入力する方法で、上記2つの方法がうまくいかない場合の上級者向け手段です。
基本的には「ダイレクト方式」を選べば、迷うことなく数分でインストールが完了します。
高額請求を防ぐための最重要設定
eSIMのインストールが完了すると、iPhoneはデュアルSIM(2つのSIMを同時に使う)状態になります。この後の設定が、意図しない高額なローミング料金の発生を防ぐために非常に重要です。
eSIMの名称を分かりやすく変更する
インストール後、新しい通信プランに名前を付ける画面が表示されます。後で混乱しないように、「主回線」(元々の日本のSIM)と区別がつく名前を付けましょう。私はいつも渡航先の国名や「Airalo」という名称に設定しています。
通話とメッセージは「主回線」を選択する
次に、どちらの回線を優先的に使うかの設定画面になります。
- デフォルト回線(通話やiMessage用)|「主回線」を選択します。これにより、普段使っている日本の電話番号での通話やSMSの送受信が維持されます。
- モバイルデータ通信|この時点ではまだ「主回線」のままにしておきます。この設定は、現地に到着してからAiraloのeSIMに切り替えます。
「モバイルデータ通信の切り替えを許可」を必ずオフにする
これが最も重要な設定です。設定の途中で「モバイルデータ通信の切り替えを許可」というスイッチが表示されます。このスイッチは必ずオフ(無効)にしてください。
この機能がオンになっていると、渡航先でAiraloの電波が弱い時に、iPhoneが自動で主回線(日本のSIM)のデータ通信に切り替えてしまうことがあります。その結果、気づかないうちに高額な国際データローミング料金が発生する危険があります。このスイッチをオフにすることが、海外でのパケ死を防ぐ最大の防御策です。
ステップ4|現地到着後も安心!アクティベートと利用開始の方法
いよいよ渡航先に到着です。飛行機が着陸したら、落ち着いてこれから説明する手順で設定を切り替えましょう。正しい順番で操作すれば、日本のSIMでローミング料金を発生させることなく、スムーズにAiraloのインターネットに接続できます。
たった4ステップ!インターネット接続を切り替える手順
データ通信が必要になる前に、以下の手順を実行します。
- 主回線をオフにする|「設定」>「モバイル通信」へ進み、「主回線」をタップして「この回線をオンにする」のスイッチをオフにします。これが誤ったローミングを防ぐ最も確実な方法です。
- Airaloの回線をオンにする|同じ「モバイル通信」の画面で、先ほど名付けたAiraloのeSIMをタップし、「この回線をオンにする」のスイッチがオンになっていることを確認します。
- モバイルデータ通信をAiraloに切り替える|「設定」>「モバイル通信」の一番上にある「モバイルデータ通信」の項目をタップし、通信に使用する回線としてAiraloのeSIMを選択します。
- Airaloの「データローミング」をオンにする|「設定」>「モバイル通信」からAiraloのeSIMを選び、「データローミング」のスイッチをオンにします。
「データローミング」と聞くと高額請求を心配するかもしれませんが、AiraloのようなプリペイドeSIMでは、この設定をオンにしないと現地の提携ネットワークに接続できません。この操作で追加料金が発生することはないので、安心してください。
繋がらない?そんな時はAPN設定を確認
ほとんどのプランは上記の設定だけで自動的にインターネットに接続されます。しかし、稀に繋がらない場合はAPN(アクセスポイント名)の設定が必要なことがあります。
Airaloアプリの「マイeSIM」から該当プランの詳細を開き、「eSIMをインストール/データにアクセス」という項目を確認します。ここに「globaldata」などのAPN名が記載されていたら、手動での設定が必要です。「設定」>「モバイル通信」>(AiraloのeSIM)>「モバイルデータ通信ネットワーク」と進み、APNの欄に指定された名前を入力してください。
まとめ|Airaloを使いこなして海外旅行を快適に
この記事では、iPhoneユーザーがAiraloを使いこなすための全手順を5つのステップで解説しました。
重要なポイントは、「渡航前の2つのチェック(eSIM対応機種とSIMロック解除)」と、インストール後の「『モバイルデータ通信の切り替えを許可』をオフにする設定」です。この2つを確実に実行することが、スムーズな利用と予期せぬ高額請求を防ぐ鍵となります。
eSIMとAiraloは、海外でのインターネット接続の常識を覆す画期的なサービスです。物理的なSIMカードの抜き差しや、高額なローミング料金の心配から解放され、スマートでストレスフリーな旅が実現します。
私が実践しているこの手順を参考に、皆さんもAiraloを最大限に活用し、次の海外旅行をさらに快適なものにしてください。