IIJmioでテザリングが急にできなくなると、非常に困ります。結論から言うと、この問題のほとんどは端末側のAPN設定を見直すことで解決します。
特にiPhoneとAndroidでは、確認すべき設定の「クセ」が異なります。私が実際に色々な端末で試した経験上、正しい手順さえ知っていれば、初心者でも数分の作業で復旧できます。
この記事では、IIJmioのテザリングでつまずきやすいポイントを、iPhoneとAndroidのOS別に分けて、具体的な解決策を徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたのテザリング問題もスッキリ解決しているはずです。
そもそもIIJmioのテザリングとは?基本を確認
トラブルシューティングの前に、IIJmioのテザリングに関する基本的な仕様を理解しておくことが重要です。誤った前提で作業を進めると、時間を無駄にしてしまいます。
テザリングは無料で使える標準機能
IIJmioのテザリング利用に、追加料金や特別なオプション申込みは一切不要です。ギガプランを含むすべての料金プランで、標準機能として提供されています。
物理SIMでもeSIMでも、契約していれば誰でも使える機能です。私が契約しているギガプランでも、もちろん追加費用なく利用できています。したがって、「オプションに入っていないから使えない」という心配はありません。
テザリング利用の3つの前提条件
テザリングが機能するためには、3つの基本的な条件が満たされている必要があります。これらが一つでも欠けていると、いくら設定を正しく行っても通信はできません。
- 有効なデータプラン| 高速データ通信の残量があること。データ容量を使い切って速度制限がかかっている状態では、テザリングは実質的に利用不能です。
- 対応端末| 親機となるスマートフォンがテザリング機能に対応していること。加えて、IIJmioが公式にテザリング動作を確認した端末であることが強く推奨されます。
- 正しい初期設定(APN)| これが最も重要なポイントです。IIJmioのネットワークに接続するための正しいAPN(アクセスポイント名)情報が、端末に設定されている必要があります。
【診断】テザリングできない原因を特定しよう
具体的な設定変更に入る前に、まずは簡単なチェックリストと症状別の診断で、問題の切り分けを行います。
まず試したい共通のチェックリスト
以下の項目は、iPhone・Androidを問わず、テザリング不具合の際に見落としがちな基本的なポイントです。私がサポートしたケースでも、ここで解決することが意外と多くあります。
- 機内モードがオフになっているか確認します。
- モバイルデータ通信(セルラーデータ通信)がオンになっているか確認します。
- テザリングを提供する親機のWi-Fiをオフにします(Wi-Fi接続が優先されるため)。
- 親機(スマートフォン)と子機(PCやタブレット)の両方を再起動します。
- My IIJmioアプリなどで、高速データ通信の残量が十分にあるか確認します(低速モードの通信制限にも注意)。
- 物理SIMの場合、一度電源を切り、SIMカードを抜き挿ししてみます。
これらを実行するだけで、一時的なソフトウェアの不具合や、単純な設定ミスが解消されることがあります。
症状別|考えられる原因と対策
共通チェックリストで解決しない場合、症状から原因をある程度絞り込めます。ご自身の状況と照らし合わせて、次に進むべき設定作業の参考にしてください。
| 症状 | 端末 | 最も可能性の高い原因 |
| 「インターネット共有」項目がない (グレーアウト) | iPhone | APN構成プロファイル未導入、またはテザリングAPNが未設定 |
| 接続できるが「ネット接続なし」と表示 | Android | APN設定の誤り、または未選択 |
| 接続できるが「ネット接続なし」と表示 | iPhone | 「インターネット共有」用のAPNが空欄 |
| OSアップデート後に突然使えなくなった | 両方 | APN設定がリセットされた |
| テザリングが即座に失敗する | Android (特定機種) | 標準のAPN設定が不十分 (MVNOの種類) |
この診断を元に、iPhoneユーザーは次の「iPhone編」、Androidユーザーは「Android編」の解決策に進んでください。
【iPhone編】テザリングができない時の解決策
iPhoneやiPad(iOS/iPadOS)でのテザリング問題は、そのほとんどが「APN構成プロファイル」に関連しています。
最重要|APN構成プロファイルの再インストール
iPhoneでIIJmioのようなMVNO(格安SIM)を利用する場合、**「APN構成プロファイル」**のインストールが必須です。このプロファイルが、通信に必要なネットワーク情報をiOSに認識させます。
テザリングができなくなった場合、このプロファイルが古いか、破損している可能性があります。私がテザリングに失敗した時も、OSアップデートでプロファイルが不整合を起こしていました。
解決策は、一度古いプロファイルを削除し、最新版を再インストールすることです。Wi-Fiに接続した状態で、「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」を開き、IIJmioのプロファイルがあれば削除します。削除後、IIJmio公式サイトから最新のプロファイルをダウンロードしてインストールし直します。
見落とし厳禁|「インターネット共有」APNの手動設定
これは非常に重要でありながら、多くの人が見落としている手順です。APN構成プロファイルをインストールしただけでは、テザリングが有効にならないケースが頻発します。
プロファイルは通信用のAPNは設定しますが、テザリング専用のAPN情報まで自動入力してくれないことがあるからです。この場合、「インターネット共有」のスイッチがグレーアウトしたままになります。
解決策は、「設定」→「モバイル通信」→「モバイルデータ通信ネットワーク」と進みます。この画面の一番下にある「インターネット共有」という欄に、APN情報を手動で入力します。入力する情報は、その上にある「モバイルデータ通信」の欄と全く同じで構いません。
| 項目 | 入力内容 (タイプD/A共通) |
| APN | iijmio.jp |
| ユーザ名 | mio@iij |
| パスワード | iij |
この手動設定を行うと、それまでグレーアウトしていた「インターネット共有」のスイッチが即座に有効になるはずです。
iOSアップデートとeSIM利用時の注意点
iOSのメジャーアップデートを適用すると、インストール済みのAPN構成プロファイルが無効化されたり、削除されたりすることがあります。
アップデート後にテザリングができなくなった場合は、慌てずに「プロファイルの再インストール」と「インターネット共有APNの手動設定」をもう一度やり直してください。eSIMを利用している場合も、基本的な手順は物理SIMと全く同じです。「アップデート後はAPN確認」と覚えておくことをおすすめします。
【Android編】テザリングができない時の解決策
Android端末は、メーカーによるカスタマイズが多様なため、問題解決のアプローチも多岐にわたります。しかし、核となるのはやはりAPN設定です。
基本のキ|APNの手動設定と有効化
Androidでは、APN情報を手動で正確に入力することが基本動作となります。iPhoneのプロファイルとは異なり、詳細な項目を自分で設定し、それを「有効」にする操作が求められます。
「設定」→「ネットワークとインターネット」→「モバイルネットワーク」→「アクセスポイント名」といった手順で設定画面を開き(メニュー名はメーカーにより異なります)、新しいAPNを作成します。
入力する主な情報は以下の通りです。
| パラメータ | タイプD (ドコモ網) の値 | タイプA (au網) の値 |
| 名前 | iijmio (任意) | iijmio (任意) |
| APN | iijmio.jp | iijmio.jp |
| ユーザ名 | mio@iij | mio@iij |
| パスワード | iij | iij |
| 認証タイプ | PAP または CHAP | PAP または CHAP |
入力後、必ず設定を保存し、作成したAPNの横にあるラジオボタン(丸い印)をタップして、それが有効な設定として選択されていることを確認します。この「選択」作業を忘れて繋がらない、というケースも非常に多いです。
最終手段|「MVNOの種類」を「SPN」に変更
これは、OPPO、Xiaomi、Motorola製などの一部のAndroid端末で、上記APN設定をしてもテザリングやデータ通信ができない場合に、極めて有効な解決策です。
これらの端末は、メーカー独自のカスタマイズが原因で、標準的なAPN設定だけではIIJmioを正しく認識しないことがあります。
APNの編集画面で「MVNOの種類」という項目を探してください。ここの設定が「なし」または「未設定」になっている場合、「SPN」(Service Provider Name)に変更して保存します。私がXiaomi端末で試した際も、他のどの方法でもダメだった通信が、この「SPN」設定一つで確立できました。
「APNタイプ」の編集とOSアップデート
AndroidのOSアップデートも、APN設定に影響を与えることがあります。アップデート後に通信ができなくなった場合は、APN設定画面を開き、IIJmioのAPNが消えていないか、正しく選択されているかを再確認してください。
それでもダメな場合、上級者向けの手順となりますが、APN編集画面の「APNタイプ」という項目(通常は default,supl などと入力されています)の末尾に、カンマ区切りで ,dun と追記することで、テザリング通信が許可される場合があります。
それでも解決しない場合の確認事項
上記すべての設定を試してもテザリングが機能しない場合、設定以前の「互換性」の問題である疑いが強くなります。
端末がIIJmioのテザリングに対応しているか
すべての設定が完璧でも、端末自体がIIJmioの回線でのテザリングに対応していなければ、テザリングは使えません。
IIJmioは公式サイトで「動作確認端末一覧」を公開しています。このリストは非常に重要で、個別の端末ごとに「テザリング」の可否が明記されています。
確認の際は、ご自身の端末モデル名だけでなく、契約している回線タイプ(タイプD|ドコモ網か、タイプA|au網か)を正確に照合する必要があります。タイプAでは「〇」でも、タイプDでは「×」という端末も存在するため、注意深く確認してください。
SIMロックとau VoLTEの壁
端末の「出自」、つまりどこで購入した端末かもテザリングの可否に関わります。ドコモやau、ソフトバンクで購入した端末には「SIMロック」がかかっている場合があり、IIJmioで利用するには原則としてロック解除が必要です。
特に重要なのが、IIJmioのタイプA(au網)を利用する場合、端末が「au VoLTE」に対応していることが必須条件となります。au VoLTE非対応の古い端末や、他キャリアの一部の端末では、タイプAでのテザリングや通信自体ができません。
IIJmioテザリングを快適に使うコツ
無事にテザリング問題が解決したら、今後はより快適かつ安全に利用するためのコツを覚えておきましょう。
私が特に実践しているのは、データ消費量の管理です。PCなどをテザリングで接続すると、スマートフォンの通常利用とは比較にならない速度でデータを消費します。My IIJmioアプリなどで、データ使用状況をこまめに確認する習慣が大切です。
バッテリー消費にも注意が必要です。テザリングは携帯電話網とWi-Fiの両方の電波を同時に使うため、バッテリーを激しく消耗します。長時間の利用が予想される場合は、親機を電源に接続した状態で行うのが賢明です。
セキュリティの確保も忘れてはいけません。Wi-Fiホットスポットには、必ず第三者が容易に推測できない強力なパスワードを設定してください。ネットワーク名(SSID)も、初期設定(例|「〇〇のiPhone」)から、個人が特定されにくい名前に変更しておくことをおすすめします。
まとめ
IIJmioでテザリングができない問題は複雑に見えますが、その原因の大半は端末側のAPN設定に集約されます。この記事で解説した診断と、OS別の解決手順を一つずつ冷静に確認すれば、多くのトラブルはご自身で解決できるはずです。
iPhoneユーザーの合言葉は「プロファイル再インストール」と「インターネット共有APNの手動設定」です。Androidユーザーは「APNの正確な入力と選択」、そして特定機種での「MVNOの種類をSPNに設定」が決定打となります。
これらの設定を見直しても問題が解決しない場合は、IIJmio公式サイトの「動作確認端末一覧」を参照し、ご自身の端末と回線タイプの組み合わせがテザリングに公式対応しているかを確認してください。正しい設定と知識を身につけ、便利なテザリングを最大限に活用しましょう。


