中国への旅行や出張で最も頭を悩ませるのがインターネット環境です。GoogleやLINE、X(旧Twitter)といった普段使っているサービスが、現地のネット規制、通称「グレート・ファイアウォール」によって利用できません。
これを回避するためにVPNを契約するのが一般的でしたが、設定が面倒だったり、接続が不安定だったりすることも少なくありません。しかし、ドコモの料金プラン「ahamo」であれば、その常識が覆ります。
私が実際にahamoを中国で使ってみて、VPNなしで快適なインターネット通信ができた体験を基に、その仕組みから料金、注意点までを徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたの次の中国渡航がもっと快適でストレスフリーなものになります。
ahamoが中国旅行で最強な理由
ahamoが中国への渡航で非常に強力な選択肢である理由は、その手軽さとコストパフォーマンスにあります。特に、他の通信手段では必須となるVPNの契約や設定が一切不要な点は、大きなメリットです。
VPN不要でGoogleやLINEが使える仕組み
ahamoの海外データローミングは、中国の通信インフラを使いながらも、データ通信は一度日本の設備を経由してインターネットに接続されます。これにより、利用者のスマホには日本のIPアドレスが割り当てられます。
結果として、中国国内のインターネット検閲システム「グレート・ファイアウォール」の影響を受けません。私が中国に滞在した際も、特別な設定をすることなく、日本にいる時と同じようにGoogle検索やGoogleマップ、LINE、X(旧Twitter)などのサービスを自由に利用できました。
追加料金なしで月間30GBまで利用できる
ahamoは、月額2,970円(税込)の基本料金内で、海外91の国・地域で利用できるデータローミングが20GBまで含まれています。中国もその対象国の一つです。
日本国内でのデータ利用分と合算して20GBまでなら、追加料金は一切かかりません。渡航のために別途Wi-Fiルーターをレンタルしたり、高額な海外プランを契約したりする必要がないため、通信費を大幅に節約できます。
ahamoを中国で使う際の料金プラン
ahamoの大きな魅力はデータ通信が基本料金内に含まれている点ですが、音声通話やSMSの利用には注意が必要です。予期せぬ高額請求を避けるために、料金体系を正確に理解しておくことが重要です。
データ通信料金|基本料金の範囲内
ahamoのデータ通信は、毎月のデータ容量である30GBを日本国内と海外で共有する形です。例えば、日本で5GB利用した場合、中国では残り25GBを追加料金なしで利用できます。
注意点として、月額1,980円(税込)で80GBを追加する「大盛りオプション」は、海外ローミングには適用されません。海外で利用できるデータ通信量の上限は、基本プランの30GBまでとなります。
通話料金・SMS料金|すべて有料で高額
データ通信とは異なり、音声通話とSMSの利用はすべて有料です。日本国内で適用される「5分以内通話無料」や「かけ放題オプション」は、海外では一切適用されないため注意してください。
特に注意すべきは、海外滞在中は電話をかける「発信」だけでなく、電話を受ける「着信」にも料金が発生する点です。具体的な料金は以下の通りです。
サービス種別 | 操作・宛先 | 料金(日本円) |
音声通話(発信) | 中国国内へ | 75円 / 分 |
日本へ | 175円 / 分 | |
その他の国へ | 265円 / 分 | |
音声通話(着信) | 中国国内での着信 | 145円 / 分 |
SMS | 送信 | 100円 / 通 |
受信 | 無料 |
中国でahamoを使うための設定と準備
ahamoの海外ローミングを利用するために、事前の申し込みは一切不要です。しかし、現地でスムーズに通信を開始するために、いくつか確認しておくべき項目があります。
出発前に日本でやるべきこと
渡航前に慌てないよう、以下の点を確認しておきましょう。ahamoの契約が有効であること、そして料金体系、特に音声通話が有料であることを再確認しておくことが大切です。
現地での設定は非常に簡単ですが、手順を一度確認しておくと、到着後すぐに行動できます。万が一に備え、オフラインで利用できる地図アプリや、中国で評価の高い「百度地図」などをダウンロードしておくと、さらに安心です。
中国到着後の設定方法
中国の空港に到着したら、簡単な設定ですぐにインターネットを利用開始できます。航空機の着陸後、機内モードをオフにしてデータローミングを有効にするだけです。
iPhoneの場合
- 「設定」アプリを開く
- 「モバイル通信」をタップ
- 「通信のオプション」を選択
- 「データローミング」のスイッチをオンにする
Androidの場合
- 「設定」アプリを開く
- 「ネットワークとインターネット」をタップ
- 「モバイルネットワーク」を選択
- 「データローミング」のスイッチをオンにする
繋がらないときの対処法
データローミングをオンにしてもインターネットに接続できない場合は、以下の方法を試してください。多くの場合、これらのいずれかで解決します。
まず、最も簡単で効果的なのが、スマートフォンの再起動です。それでも改善しない場合は、「機内モード」や「モバイルデータ通信」がオフになっていないか、設定を再確認します。
最終手段として、ネットワークの「手動選択」があります。設定から「ネットワーク選択」や「通信事業者」の項目で自動選択をオフにし、「China Unicom」や「China Mobile」といった現地の提携キャリアを手動で選ぶと、接続が改善されることがあります。
ahamoを中国で使う際の注意点
ahamoは中国旅行において非常に便利なサービスですが、いくつかの重要な制約があります。これらの注意点を理解しないまま利用すると、通信ができなくなったり、高額な請求が発生したりするリスクがあります。
15日以上の長期滞在は速度制限がかかる
ahamoの海外ローミングには「15日ルール」という絶対的な制約が存在します。これは、海外で最初にデータ通信を利用してから15日間が経過すると、通信速度が最大128kbpsに制限されるというものです。
この128kbpsという速度は、テキストメッセージの送受信がやっとのレベルで、ウェブサイトの閲覧や地図の表示はほぼ不可能です。この速度制限は、データ容量を追加購入しても解除できず、日本に帰国して通信するまで続きます。16日以上の滞在を計画している場合は、ahamoを単独の通信手段とせず、現地のSIMカードなど他の手段を用意する必要があります。
音声通話とSMSは高額請求のリスクがある
私がahamoを利用する上で最も注意しているのが、音声通話の扱いです。ahamoには、海外での通話・SMS料金が月間50,000円を超えると、データ通信を含むすべてのサービスが月末まで停止されるという仕組みがあります。
意図せず長電話を受けてしまうだけで、この上限に達してしまう危険性があります。そうなると、ahamo最大のメリットであるデータ通信まで使えなくなり、地図アプリや翻訳アプリも利用できず、現地で孤立する事態になりかねません。対策として、中国滞在中のコミュニケーションはLINE通話などのデータ通信を利用したアプリに限定し、通常の音声通話は使わないことを徹底すべきです。
Googleマップが正常に機能しないことがある
ahamoを使えば中国でもGoogleマップへのアクセス自体はできます。しかし、「アクセスできること」と「正常に機能すること」は別問題です。
実際に私が利用した際も、地図情報は表示されるものの、公共交通機関の乗り換え案内や店舗情報が不正確なケースが多く見られました。これはGoogleが中国国内の正確な地図データを十分に持っていないためです。移動で困らないためにも、信頼性の高い現地の地図アプリ「百度地図 (Baidu Maps)」や「高徳地図 (AMAP)」を併用することを強く推奨します。
まとめ

ahamoは、VPN不要で中国のインターネット検閲を回避できる、非常に強力なツールです。15日以内の短期滞在で、データ通信を主目的とする旅行者にとっては、これ以上ないほど便利でコストパフォーマンスの高い選択肢と言えます。
しかし、「15日ルール」による速度制限や、高額な音声通話料金、それに伴うサービス停止リスクといった重大な制約も存在します。
ahamoのメリットとデメリットを正しく理解し、自分の渡航スタイルに合っているかを見極めることが重要です。この記事で解説したポイントを押さえて、あなたの中国旅行をより快適なものにしてください。